留学生が就職先が決まり、在留資格「技術・人文知識・国際業務」へ変更する場合の要件
●日本の大学を卒業した留学生
●専修学校を卒業し「専門士」の称号を付与された留学生
1.行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること(この場合は「技術・人文知識・国際業務」)
●日本の国や地方公共団体、会社や任意団体などとの継続的な契約に基づくものであること
●自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動であること
就職先の職務内容が、理学、工学その他の自然科学の分野または法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務であることが必要
2.原則として法務省令で定める上陸許可基準に適合していること
*上陸許可基準とは、日本の産業及び国民生活に与える影響やその他の事情を考慮した、その在留資格を得るための基準のこと(出入国管理及び難民認定法7条1項2号の基準を定める省令)
●従事しようとする業務に必要な技術又は知識に関連する科目を専攻して卒業していること
就職先の職務内容と大学、専修学校における修得内容に関連性があることが必要
*日本の専修学校を卒業し「専門士」の称号を付与された留学生が本国で大学を卒業している場合は、本国の大学で修得した内容が就職先の職務内容と関連していれば基準を満たすことになります。
●日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
3.その他の要件
●素行が不良でないこと(留学生として在留していた状況を審査されます)
以下のような場合は、狭義の「相当性」なし(素行不良)あるいは「在留資格該当性なし」(継続的、安定的に活動を行うと認められない)として不許可となります
・大学、専修学校の成績が著しく不良である
・欠席率が高い
・資格外活動許可を得ずに就労していた
・資格外活動許可の範囲外の風俗営業に従事していた
・資格外活動の制限(1週28時間以内)を超えて就労していた
など
*また、提出する申請人の履歴書が、「留学」→「技術・人文知識・国際業務」へ変更申請の時と「留学」の在留資格の申請の時とで内容が違っていることが判明した場合、「留学」の在留資格取消事由に該当し得るような事案として、在留資格変更を認める狭義の「相当性」がないと判断され不許可になる可能性があります。なぜそのような誤りが生じたのか、合理的な説明を行う必要があります。
●入管法(出入国管理及び難民認定法)に定める届出等の義務を果たしていること
中長期在留者で、在留カードについての届け出義務を果たしていることが必要
≪ポイント≫
留学生の就職は卒業年度の在学中に決定していることが多く、その場合は学校を卒業する2~3か月前に資格変更申請を出して審査を受け、許可になった場合 は、学校を卒業した時に卒業証書を提示して最終的に在留資格変更の許可を受けることになります。
【許可された事例】
◆大学(法学部)を卒業し、法律事務所との契約に基づき、月額19万円の報酬を受けて、弁護士補助業務に従事するもの
◆大学(教育学部)を卒業し、語学指導を業務内容とする企業との契約に基づき、月額17万円の報酬を受けて、英会話講師業務に従事するもの
◆マンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された者から、日本のコンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額22万円の報酬を受けて、ゲーム開発業務に従事するもの
◆自動車整備科を卒業し、専門士の称号を付与された者から日本の自動車の点検・整備・配送・保管を業務内容とする企業との契約に基づき、月額18万4千円の報酬を受けて、サービスエンジニアとしてエンジンやブレーキ等自動車の基幹部分の点検・整備・分解等の業務に従事するとともに、自動車検査員としての業務に従事することとなるもの
【不許可の事例】
◆大学(経済学部)を卒業した者から、会計事務所との契約に基づき、月額23万5千円の報酬を受けて、会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、当該事務所が実態のあるものとは認められず「人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの
◆大学(商学部)を卒業した者から、貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき、月額20万円の報酬を受けて、海外取引業務に従事するとして申請があったが、申請人は「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり、資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、その在留状況が良好であるとは認められず、不許可となったもの
◆専修学校(日中通訳翻訳学校)を卒業し、専門士の称号を付与された者から、日本の漆器製品の製造を業務内容とする企業との契約に基づき、月額12万5千円の報酬を受けて、中国語翻訳・通訳、漆器の塗装補助業務に従事するとして申請があったが、通訳・翻訳業務については、それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと、漆器塗装は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず「技術・人文知識・国際業務」に当たらないこと、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額17万円であることが判明したため、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの
(法務省ガイドラインより)
≪提出書類≫
就労先のカテゴリーによって提出する書類が変わります。
●カテゴリー1
●カテゴリー2
前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1500万円以上ある団体・個人
●カテゴリー3
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
●カテゴリー4
カテゴリー1~3のいずれにも該当しない団体・個人
〈共通の書類〉
1.在留資格変更許可申請書 1通

・申請人本人のみが撮影されたもの
・無帽で正面を向いたもの
・背景(影を含む)がないもの
・鮮明であるもの
・申請前3か月以内に撮影されたもの
◎申請人以外の方が申請を行う場合は、在留カードのコピーを申請人に携帯させる(原本は申請人が申請に必要なため)
4.カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書 適宜
5.専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書 1通
〈カテゴリー3、カテゴリー4のみ提出する書類〉
6.申請人の活動内容等を明らかにする次のいずれかの資料
7.申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書
*申請に係る技術又は知識を要する職務に従事した期間及び内容並びに期間を明示した履歴書 1通
*学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書
ア.大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベルA,B又はCに限る) 1通
イ.在職証明書等で、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む) 1通
ウ.IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書 1通 (共通書類5の資料を提出している場合は不要)
エ.外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書 1通
◎申請人が専修学校を卒業した場合は、卒業証明書、成績証明書のみならず、修得内容を具体的に記述した資料や、専修学校が発行する外国人留学生のための募集案内なども用いる。そして勤務先企業のホームページや会社案内など職務内容が具体的にわかる資料も用いて、申請人が修得した専門知識が就職先のどのような職務に生かされるのかをできる限り具体的に説明することが必要となります。
8.登記事項証明書
9.事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
*就労先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む)等が詳細に記載された案内書 1通
〈カテゴリー4のみ提出する書類〉
11.前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
◎ 就労先が小さな会社の場合、決算書や取引を証明する資料などを用いて、会社の安定性、継続性を充分証明できることが必要となります。
12.身分を証する文書等(戸籍謄本など) 提示
申請人本人以外の方が申請を提出する場合に、申請を提出できる方かどうかを確認するために必要となるもの(後述【申請について】の「申請者」をご参照ください)
また、申請人以外の方が申請書類を提出する場合でも上記3の「申請人のパスポート及び在留カードの提示」が必要です。
◎提出資料が外国語で作成されている場合は、日本語訳を添付すること
◎原則として、提出された資料は返却できないため、再度入手することが困難な資料の原本の返却を希望する場合は、申請時に申し出ること
◎申請後に、入国管理局の審査の過程において、上記以外の資料を求める場合もある
◎活動内容を変更し、他の在留資格に該当する活動を行おうとする場合は、速やかに申請すること。継続して3か月以上、現に有している在留資格に係る活動を行っていない場合は、在留資格の取消しの対象となるため注意が必要
【申請について】
*申請期間
在留資格の変更の事由が生じたときから在留期間満了日以前
(申請後、現在の在留資格の在留期間の満了の日までに結果が出ないときは、在留期間の満了後も、結果がでる日または在留期間満了の日から2か月を経過する日のいずれか早い日までの間は、引き続き現在の在留資格をもって日本に在留することができる)
◎なお、卒業年度の在学中に就職が決定している場合は、学校を卒業する前に資格変更申請をだして審査を受けておき、学校を卒業した時に卒業証明書を提示して最終的に在留資格変更の許可を受けることになります。
*申請者
1)申請人本人
2)代理人(申請人本人の法定代理人)
3)取次者
◎申請人以外の方が申請する場合、申請人本人は入国管理局に来る必要はないものの、日本に滞在していることが必要です。
*結果が出たときの在留カードの受領者
申請者と同じ
(申請人本人の所属する企業・学校の職員、配偶者、子、兄弟姉妹などは、上記「申請者」に該当しない限り、在留カードを受領することはできません)
*手数料
許可されるとき 4000円(収入印紙で納付)
*必要書類など
●資格外活動許可書 提示(この許可書の交付を受けている方の場合)
●旅券または在留資格証明書 提示
●旅券または在留資格証明書を提示できないときは、その理由を記載した理由書
*提出先
居住地を管轄する地方入国管理官署
*受付時間
平日 9:00~12:00 13:00~16:00
申請する手続により曜日や時間が決まっている場合もあり
*相談窓口
地方入国管理官署、または外国人在留総合インフォメーションセンター
*申請結果が出るまでの期間
2週間~1か月
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